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不倫と不貞は同じもの?

 結婚したら、浮気をしてはいけません。
 常識の範囲内のこととして、大半の方はご存知でしょう。

 

 「不倫なんてもってのほか」というのも、同様に常識の範疇でしょう。

 

 時々世間では、「○○さんが不倫で離婚した」「不倫相手の奥さんから○○○万円の慰謝料を請求されてしまった」などとうわさになることもあり、場合によっては、不倫が離婚の原因になったり、慰謝料請求をされる原因になることがある、ということもよく知られていることかと思います。

 

 これに対して、「不貞」という言葉は、法律用語でもあるのですが、それでもその語感から、だいたいのイメージはつかめる方がほとんどではないかと思います。

 

 ただし、法律用語としての「不貞」にあたるかどうかは、離婚できるか(されてしまうか)、慰謝料を払うことになるか(請求することになるか)に直結する重要な問題ですので、「だいたいつかめる」では少し不十分です。
 そこで、最初に、何が「不貞」にあたるのか、不倫と不貞の違いを中心に、簡単に整理しましょう。

 

 「不倫」とは、結婚している男女のどちらかが浮気をすること、というあたりが最大公約数的な定義かと思います。多くの場合、肉体関係をともなっている場合を指すようですが、あまりはっきりしておらず、肉体関係をともなわなくとも、例えば、元カレ(元カノ)と結婚後も二人で会って食事などしていれば、不倫と考える人もいるのではないでしょうか。

 

 「不貞」については、法律家の間でも、「一夫一婦制の貞操義務に忠実でないすべての行動」という考え方(広義説)と、「配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」という考え方(狭義説)の2通りの考え方があります。
 要するに、肉体関係をともなう場合だけに限定するのか、ともなわなくとも「不貞」にあたることがあるのか、という違いです。

 

 最高裁判所の判例では「配合者のある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係結ぶことをいう・・・」(最判昭48.11.15判タ303-141)とされていて、結論としては、狭義説(肉体関係をともなうものだけを「不貞」と考える)に立っていると法律家の間では考えられています。

 

 ですので、不倫という言葉はかなり曖昧な言葉ですが、「不貞」という言葉はそれなりにはっきりしていて、結婚している人が、配偶者以外の人と肉体関係を持つこと、と一応、整理していただければと思います。

 

慰謝料請求する場合における「不貞」は少し違う

 

 上記で、肉体関係をともなう場合だけを「不貞」と、一応、整理しました。

 

 しかし、「一応」、というのには理由があります。肉体関係をともなわなくとも法的な責任が発生する場合があるのです。

 

 実は、「不貞」という用語は、「裁判上の離婚」(民法770条)の第1項1号に出てくる言葉です。
 同号の「不貞」があった場合、裁判を通じて、相手が同意しなくとも離婚できる、ということです。

 

 つまり、離婚できるかできないか、ということが問題になる場面では、肉体関係があったのかどうかが重大問題になる、ということです。
 反対に言えば、離婚そのものが争われるのではない場面、典型的には、不貞(不倫)をされた配偶者が、不倫相手に慰謝料を請求するような場面では、かならずしも肉体関係があった場合だけに限らない、ということなのです。

 

 不貞(不倫)の結果として、離婚を求める場面と慰謝料を求める場面とでは、法律上は、かなり異なっているといえます。

 

 上に挙げた不倫相手に慰謝料を請求するのは、不法行為(民法709条)に基づくものであり、夫婦同士で貞操義務に違反したから離婚を求めること(民法770条1項1号)とは、法律上は全く別の問題となります。

 

 ですので、不貞慰謝料請求と言い方を弁護士も使うことがありますので混乱しがちですが、慰謝料を請求する場面での「不貞」という言葉は、肉体関係がともなう場合だけに限らず、もう少し広く、世間一般でいうところの不倫関係全般に近づくことになります。

 

 具体的な例は、頁を改めてご説明したいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

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